第一回 流通が変わる

生産者と消費者を結び、製造業と顧客企業を結ぶ流通のシステムに明らかな変化が起きつつある。中小企業経営者達が、「物が売れなくなった。大量販売でなく、少量多品種販売になった。今までは大手お得意さんが売り上げの八割を買って呉れたが、最近ではより多くの数の顧客へ平均的に販売するようになった。中間業者を通してでなく、直接販売が多くなった。海外から問い合わせや注文が入るようになった」などと感じつつある。

これらの変化をもたらしているものはインターネットである。アマゾンやイーベイなどの例で判るように、インターネット上で人々は物を買い、見知らぬ同士が直接売ったり、買ったりする。その事により、商圏は従来の身近な距離から、国内を越え、世界中に広がった。小さな町で女性用下着を製造していた中小企業が米国内はおろか世界中にインターネット上で販売出来るようになった。胡椒を生産し、小規模な製品化を行っていた田舎町の農家が米国中で知られる店になった。

このような変化は徐々にではあるが、日本でも起きている。北海道の冷凍カニ販売業者はインターネット上で宣伝し、沖縄や鹿児島まで日本全国中から注文を得ている。消費者は今まで家の近くの魚屋さんで買っていたものを遠く北海道から買う。農業の分野でも有機栽培の新鮮な農産物を直接消費者に売る産地直送が増えている。楽天などの例以外にも色んな物がインターネット上で直接取引きされている。

インターネット上での販売はイーコマース(電子商取引)と呼ばれるが、米国ではすでに十年以上の歴史がある。いろんなノウハウが蓄積され、従来の流通チャンネルや直接店舗販売の強みに近付く方法が考案され、同時に従来のシステムにはなかった強みを生み出している。新しい強みは宣伝や営業に掛かる販売経費の縮小である。直接販売による利益率の拡大である。購買者から見ると、簡便さである。家の寝室からでも多様の種類を選び、購入出来る。品揃えも従来の店の規模の制限に捉われず、インターネット上では限りなく商品を展示出来るため選択の幅が広がり、詳しい説明も入手出来る。

企業と企業の間の取り引きにもイーコマースが増えている。取り引き業務の敏速さ、正確さが相互の業務の効率を高めている。購買する側は国内業者のみならず世界中の業者から見積もりを取り、発注し始めている。現在はまだ言葉の壁や商習慣の違い、決済方法の違いなどがあり、本当の意味の商圏のグローバル化は進んでいない。しかしこの流通スタイルの変化の波は確実に企業の販売体制の見直しを求めている。その点ではイーコマース発祥の国であり、世界最大の市場である米国の動きを注目し続ける必要がある。(終わり)



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